しろまち堂~こちらも本館ですがただいま休館中の旧館です~

旧ブログ名は『ワタシノスキナコドモノ本』、本の紹介や本に関するアレコレを語る、『しろまち堂』のメイン館でしたがただいま休館中のため、こちらは旧館でございます。『しろまち堂』は『本館・新館』のほか、『~音楽・映像館~』、『~写真・旅行館~』『~縁側~』もございます。煩雑ですがあわせてよろしくどうぞです。

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半神

たった16ページとは思えない
鮮烈で、悲しく
そしてなんとも美しい短編です。

「半神」は文庫も出ていますが
ワタシが買って持っているのはこちらの本です。

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価格:1,680円(税込、送料込)


↑の本は自薦短編集でして、半神のほかに
「イグアナの娘」「天使の擬態」「学校へ行くクスリ」「午後の日差し」「偽王」「温室」「マリーン」「カタルシス」「帰ってくる子」「小夜の縫うゆかた」「友人K」
が入っております。盛りだくさん!
ってことで、この本からも今後何作か紹介する予定です。

野田秀樹さんが舞台化したことでも有名なこの作品
非常に名作なのですが
なぜか?と問うたところ
「これが誰も責めない作品になっているからだ」
というこたえが自分のなかから浮かんできました。

後のシリーズここではない★どこか の「山へ行く」に収録された『くろいひつじ』にも
共通する感覚を感じるのですが
家族に対する想いというのは、近いだけにどうしようもなさがありまして

悪気はないけれど、いたわりに乏しい場合が往々にしてあり
心理的に近いわけでもないが縁を切るのは並大抵ではなく
要するに、他人ならば簡単にとれる距離がどうにもとりにくい
なかなか厄介なシロモノであると
ワタシなどは思うわけです。

そしてこの関係性のなかに葛藤があると
根深くなりやすく
他者との関係のなかでも反映されてしまったり…というところまで話を飛ばすと
これはもう物語とはかけ離れますので閑話休題として。

ふたごのきょうだいとして生まれたこと
なにかと比較されてしまうこと
どう考えても貧乏くじを引かされてしまうこと
そう思う自分の醜かったり卑屈になってしまうような、負の気持ちを理解してもらえないこと

どれひとつとして主人公・ユージーに落ち度があるではなし
たとえひとつひとつが小さなことだとしたって
積み重なり、年月を重ねれば
それはもうかなりの重石。

でも、
相手をうとましく思ってしまう自分に対しての自己嫌悪はね
やっぱり感じちゃうわけです。
無意識だとしてもつらい感情なのに
ユージーは聡明ですから
理屈で判断しようとしている分
おそらく傷ついた感情は奥深く潜んでしまっていることでしょう。

「いっそ妹を殺したい
わたしの不幸はそれほど深い」

賢く忍耐強いユージーに作中でここまで言わしめてしまう状況ですが
そのことに関して
同情することはあっても、彼女を責められる人はおそらくいないはず。

だって
彼女たちはシャム双生児なのですから。

この離れられなさ
耐えがたさ
そして
本質的すぎておそらく自覚がないであろうほどの深い愛情と
裏返しの憎悪。

説得力があり
読者は「不条理だよね」と責任を持たずにいうことができ
共感し
自分のなかにある同種の感情に後ろめたさを持たずにすむ
残酷だけれど完璧なシチュエーション。

彼女の苦悩も
その後の解放感も
時間がたった後、ふとよみがえる深い深い喪失感も

どれもが
ワタシたちのなかにもひそんでいるものです。

それらの複雑な想いを素直に味わい
認めさせてくれる
そして、認められたことにより
傷ついた感情がなだめられ、昇華に向かう
そんな短編だと思います。


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