しろまち堂~こちらも本館ですがただいま休館中の旧館です~

旧ブログ名は『ワタシノスキナコドモノ本』、本の紹介や本に関するアレコレを語る、『しろまち堂』のメイン館でしたがただいま休館中のため、こちらは旧館でございます。『しろまち堂』は『本館・新館』のほか、『~音楽・映像館~』、『~写真・旅行館~』『~縁側~』もございます。煩雑ですがあわせてよろしくどうぞです。

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希望の牧場

喉もとをおさえられるような作品でした。。。


【内容情報】(「BOOK」データベースより)
東日本大震災のあと発生した原発事故によって「立ち入り禁止区域」になった牧場があります。だれもいなくなった町の牧場にとどまり、そこに取り残された牛たちを、何が何でも守りつづけようと決めた、牛飼いのすがたを描き出す絵本。
文:森絵都
絵:吉田尚令
出版社:岩崎書店
初版:2014年9月30日

吉田さんの作品は
『悪い本』
を過去記事で紹介しています。

森絵都さんの作品もいろいろ紹介しているのですが
リンクがうまく貼れないのです、ごめんなさい!
気になる方はサイドバーから検索いただけますと幸いですm(_ _)m



震災から年月がすこしずつ過ぎています。
忘れているわけではないけれど、当時ほどの切羽詰まった感じはなくなりつつあり。
けれど
現場にいる人たちにとってはそうではなく、まだ続いているのだと
伝えにくる作品です。

当時の放射線量のため、出荷できなくなった肉牛たち。
肉にできなければどうするか?
生きるか死ぬか、です。
育て続けるか、殺処分するかの二択しかありません。
そして
殺処分に同意せず、牛を育て続けることを選んだうちのひとりが
この作品で語り手となっている吉沢さんです。

「牛飼い」であることは
牛を育てること。
同時に牛を出荷して代金を得ることでもあります。

しかし、今この牧場にいる牛たちは出荷できず
お金は入りません。
でも、お腹を空かせる牛たちには草が必要です。
食べて、飲んで、出して。
その世話をするのが牛飼いです。

いつまで?

この絵本を読み、正直な話、ワタシが気になったのはそこでした。
ネットで調べた知識ですが
肉牛は本来なら2年前後で出荷なんだそうです。
実際の寿命は20~30年なんだそうでして。
間を取って25年としても
あと20年以上あるのです。

その長さと、現実の1日1日の積み重ねが脳裏に浮かびました。
おそらくですが
わたしがこの作品を読んで「喉もとをおさえられるような気がした」と書いたのは
この「先の年月」を意識にのぼらせたくないと思いつつも、消しきれないからなのでしょう。

牛たちが生きている間
その土地を動けず
牛を育て続けて行くのです。
収入のめどもはっきりしないまま。

殺処分について。
単純に行為として見た場合
肉にするということも結局は殺すこと、というのもひとつの見方です。
肉になって人の口に入るという後の工程がないだけです。
けれど
吉沢さんはその選択にNOを示したのです。

殺処分を受け入れた人たちからの非難もあったようです。
仕方ないことと書いていらっしゃいます。
理不尽と思いつつ受け入れた人と、受け入れられなかった人が対立の立場のようになってしまうのは
やむをえないことでしょうと読み手のワタシも思います。

なんというか
この本から読みとるのは
こんなふうに、殺処分が受け入れられずに
牛を飼っているひとがまだあの場所にいるんだよ、
ということ「だけ」なのではないか。
おかしなかたちに
ヒーロー的に
まつりあげるのは違うのではないか
という気がして、しかたがないのです。

(非難を受けるかもしれないなと思いつつも書いてしまうと
正直
「希望の牧場」という呼び方はしっくりこないような気もします。
なにをもって希望なのか
例えばこの先何かが変わって、今育てている牛たちを出荷していいよとなったとき
出荷するのか?
出荷されたとして、希望の牧場とほめそやす人たちは、その肉を食べようとするのか?

現実にありえないことでしょうけれど
なんとなく
そういう側面を無視しての呼び名のような気がしてしまいます)

森さんの文章はさりげなく
それでいて、吉沢さんが喋っている声まで聞こえそうな
ことばの「重み」を持っています。

吉田さんの絵は
写実的でありつつも、写実でありすぎないよう
生活のにおいは残すけれど、
リアルにしすぎることで、陰惨にならぬよう
例えば殺処分にしたがった人たちの事を描いていても
その心のうちが伝わるよう
現実が息苦しくても、たとえば家の動物がリラックスしているならそのままに
絵にさまざまな想いをこめ、けれど押し付けにならないよう最大の配慮をしていらっしゃいます。

作り手のおふたり
そして、この企画を通し、そのために尽力している出版社の方々
たくさんの人の心と力と思いがつまった1冊です。

ワタシはかなりあまのじゃくな受け取りかたをしていると思いますが
読む人がひとりひとり違う何かを感じ取り
風化させぬよう、こころに留め置くべきことを考えさせてくれる作品です。

出版されたばかりですので
書店で見る機会も多いのではないかと思います。
お手にとって見てみていただけましたら幸いです。
                                                                                                                  

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