しろまち堂~こちらも本館ですがただいま休館中の旧館です~

旧ブログ名は『ワタシノスキナコドモノ本』、本の紹介や本に関するアレコレを語る、『しろまち堂』のメイン館でしたがただいま休館中のため、こちらは旧館でございます。『しろまち堂』は『本館・新館』のほか、『~音楽・映像館~』、『~写真・旅行館~』『~縁側~』もございます。煩雑ですがあわせてよろしくどうぞです。

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猫と庄造と二人のおんな

うふふふふ。
こういう本もこれからは紹介してきますよっと♪


一匹の猫を中心に、猫を溺愛している愚昧な男、猫に嫉妬し、追い出そうとする女、男への未練から猫を引取って男の心をつなぎとめようとする女の、三者三様の痴態を描く。人間の心に宿る“隷属"への希求を反時代的なヴィジョンとして語り続けた著者が、この作品では、その“隷属"が拒否され、人間が猫のために破滅してゆく姿をのびのびと捉え、ほとんど諷刺画に仕立て上げている。

著者:谷崎潤一郎
出版社:新潮社(新潮文庫)
初版:1951年8月25日
ちょ、この初版年!
ずーっと売れてるんだ…。すごい…。
文学、ハンパないですねぇ…★


◆猫は飼うものではなく、飼われるものだというのは半世紀以上変わっていないようです◆
って、どんな見出しなんだと自分で書いていて思いましたが
これしかピッタリこないんですよー。

いつかは飼ってみたい…と思いつつ、いまだ同居のチャンスがないのですが
猫さまと暮らすと、飼い主のはずなのにどうもあちらがご主人になるようなんですよね。
最近でいうと、くるねこ大和さんの『猫間商事下請け』というネーミングがツボでございます。

なんて書いてるワタクシですが、最初っからずーっと猫好きだったわけではなくて
何段階かの段階を経ていまして。
その最初のほうの段階で読んで「猫って、そんなに惚れこんでしまうものなの?」と思ったのが
この作品を読んだときでした。
以来、この本はずっとワタシの『フェイバリット・オブ・谷崎作品』なのです。いやマジで!

谷崎さんのフェチっぷりはハンパなくて
まあたいがいは女性の足の美しさを賛美しているのですが
この『猫と~』ではそのフェチが猫に向かって全開になっているんですよー。

登場人物は「一組み半」の夫婦&姑。
はい、「一組半」ってのが『庄造とふたりのおんな』です。モト妻とイマ妻ですな。
イマ妻と結婚するためにモト妻が追い出されちゃったわけでして
そこにはお金がからんでいます…という
なんとも生臭いオハナシ★

しかも、追い出されちゃったモト妻も、しおらしいには程遠いしっかり者…というか、いっそかわいげのないタイプだったり。
なんというか、
こんなに共感できないタイプの登場人物ばっかり出てくるのは珍しいんじゃないか?
ってくらいの書かれっぷりでございます。

それなのに面白くてたまらん!というのはひとえにの描かれかたの秀逸さによります。
(あっ、思わず太字で大きくしちゃった…)
美猫ですが、ちょっとご年配気味。お利口さんでプライド高し。
猫好きさんは上の一文だけできっとだいたいのことを連想なさるでしょう。そして8割がた当たっていることでしょう。
それくらいこの猫・リリーさんの書かれっぷり、お上手なんです。

飼われはじめのようすから、同居している間のエピソードあれこれなどが
家族の歴史とともに語られていまして、
それはもう猫好きであればさぞやメロメロになるでしょうと。
そして猫が好きでなければ微妙に目障りでありましょう…というところまで絶妙に書かれております。

なにしろね、猫好きがいちばんダメンズの庄造さんですからね。
それはもう猫スキーとダメっぷりの抱き合わせ感ハンパなく
うへぇ…と思いながらも女性週刊誌タイプの好奇心が刺激されてしまうわけですw
その愛猫リリーさんがモト妻の品子さんに引き取られてしまい
猫は恋しい、しかしモト妻とはかかわりたくないという複雑かつやるせない心境になっておりまして。

いっぽうモト妻品子さんは下心ありでリリーを引き取ったんですが
猫を自分の責任で飼うのは初めてですから、てんやわんやになりーのトラブルありーの。
そうこうしているうちに情がわき、
庄造さんほどメロメロとまではいかないものの、かなりの猫好きさんになっている模様。
まったくリリーさんは魔性の猫ですな。

このめいめいの心理状況にからめて
結局のところ猫はそれほど好きではないイマ妻・福子さんだの
ダメンズの母としていろいろ屈託ありの姑・おりんさんだのの話が絡む絡む。
しょうもない人たちのしょうもない話のはずなんですが、野次馬根性が刺激されるといいましょうかなんといいましょうか。
流麗な文章で読む下世話な話って、なんて面白いの!って感じです。
こういうのもミスマッチの妙なんでしょうかね?

リリーさんも人の生臭事情に巻きこまれている被害者(被害猫?)なんですけど
どこに行っても最終的にかわいがられてしまうあたり、さすが猫!
タイトルの最初に出てくるのはダテじゃありません。中心はなんたってリリーさんですよ。

とにかく人間はみんなしてそれぞれの欲に振り回されまくって
なんとも芯のない話ではあるのですが
その芯のなさ、頼りなさがどことなく猫のしなやかさにも共通するようで、
奇妙にひきつける魅力をもった作品なのです。

文庫本で本編120ページ足らずの短編ですが
読み応えアリアリです。
未読の猫好きさんは必見の書ではないかと思いますので
機会がありましたらぜひぜひどうぞでございます。



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