風の靴
あと1カ月早く読んで紹介してたら時期ピッタリだったんですが
ちょいと遅れてます★
【送料無料】風の靴 |
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
海を渡る風を見ているときと同じ顔だった。陸で話していたのに。「自分のからだが透明になって、船とひとつになって、駆けていくんだ。」-そうなんだ。おじいちゃんが、風に靴を履かせる。風が靴を履いて、大海原を駆けていく。そんなふうに、ウインドシーカー号は走る。あふれる光のなか、きらめく波を切って。僕らの船は、風の靴になって、どこまでもどこまでも駆けていく。海が空にふれてひとつになり、空が天にとどくはるか高みまで。「かはたれ」「たそかれ」の作者朽木祥の新境地-。
朽木さんの作品は初紹介でございます。
この方の作品は河童の物語「たそかれ」「かはたれ」が有名ですが
この「風の靴」はファンタジーではなく、しっかりYAです。
主人公が中学受験に失敗、というイントロは
イマドキの都会の子だとわりと理解されやすそうな「あるある」パターンですが
そのあとの、くさった気分の立て直しとしての
夏休みの家出に船を使うというのは
あんまりないパターンで、でも夏っぽくてイイなあ、と思います。
船の図があって、どの部分のことか文章をちゃんと参照できるようになっていたり
主人公の海生と親友の田明が<家出リスト>を作るときの持ち物がえらい本格的だったりで
ちょっとランサムの「ツバメ号シリーズ」っぽいな?と思ったら
物語の中に「海へ出るつもりじゃなかった」のタイトルが出てきたりして、にんまり。
そう思ってみてみると、田明の妹・八千穂はちょっとロジャっぽいかも?
本つながりでいうと、田明が猫じゃらしのポップコーンを作るシーンがありまして
『冒険図鑑』で学習したんだっけ
などと言っており
読んだ本がかぶっている人は更ににんまりできそうです。ふふ。
家出の割に、置き手紙が「田明の家に泊まりにいく」だったり(田明は「海生の家に泊まりにいく」)で
デモンストレーション的な家出のようでいて、こっそり抜け出してプチ旅行っぽくはありますが
要するに海生は煮詰まった日常を離れたかったんでしょうね。
つきあってくれる田明は…なりゆきですね。親友だもん。
このふたりの幼なじみ感は、妹の八千代も含めていい感じです。
遠慮なく何でも話せる、こういう相手がいるから
「サイテーがサイアク」な気分に変わっても
暗すぎるムードにはならないんですよね。
家出中、海生は田明に自分の気持ちを打ち明けることで
自分の中で整理がついて
家に戻ってからも親にうまく自分の考えを伝えられるようになりましたしね。
愛犬のウィスカーも海生をなぐさめていますが
言語化では人の親友に勝るものはない、かも。
(しかし、途中でなんですが、この本の紹介は書きにくい!
なんでかというと、海外の小説や児童書によくある
翻訳者のあとがきみたいな解説を、なんと神宮輝夫さんが書いてらしてですね
ものすごーく的確かつ読みやすくて
おんなじようなことを書くのがはばかられ
違うところを拾おうとすると
時間がかかってしまうという…★)
ただくさっているだけから
自分がどうしたいのかをちゃんと考えられるようになる
海生の内面の変化とか
家出中の
ふだんはあんまり食べる機会のなさそうな
ごはんやおやつとか
日常の隣の非・日常加減が
とっても楽しそうで
こんな家出ならちょっとやってみたいかもー
と思わされます。
重箱の隅的に残念なことをあげるとすれば挿絵かな。
キレイでじょうずなんですが
子どもたち3人、実年齢より2~3歳上に見えます。
中1というより中3か高1。
イマドキの子は確かに大人っぽいですが
3人が3人とも年齢より上に見えて
しかも整った顔立ちで
どっかの子どもモデルの写真を参考にしましたねー
みたいな印象がぬぐえず
そこが残念でした。
とはいえ
そこはホントに重箱のスミ。
全体的には
主題をしっかりとまとめつつ
意外な部分もちゃんと出しているので
読みやすく、かつ
読みごたえあります。
ランサムを読み終わって
ヨットとアウトドアの楽しさをもっと味わいたいかたに
おススメの1冊です。
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